「制作費0円、サーバー代だけでホームページが作れます」
起業系レンタルオフィスを運営するAさんは、ある日こんな営業電話を受けた。すでに自社のホームページは持っていたが、「ティザーサイト(別の集客用サイト)として制作費は一切かかりません。月額はサーバー代のみ、たったの3万円です」という話に引き込まれた。
「起業」というキーワードでSEO集客ができる、ポータルサイトにも掲載してもらえる、今のホームページより問い合わせが増える――。営業担当者のトークは巧みで、Aさんは「本当に効果がありそうだ」と思い込んだ。そして、申し込むことを決めた。
ところが冷静に計算してみると、10ページ構成で月3万円×60か月(5年)=180万円。しかもドメインとサーバーは制作会社が管理し、解約するとドメインを持っていかれる。そして「申し込みます」と伝えた後になって初めて「リース契約になります」という言葉が出てきた。制作費の分割払い、つまり実質借金だったのだ。
Aさんはこう語る。「既存の借入が多かったせいで、リース会社の審査が通らなかった。あのとき審査が落ちて、本当に助かりました」
この記事でわかること
- ホームページ制作「0円」の3種類の違いと仕組み
- 月額制・リース型の長期コストと本当のリスク
- 解約したときにドメイン・メールアドレスがどうなるか
- 契約前に必ず確認すべき5つのチェックポイント
私はホームページ制作を専門とするWebコンサルタントとして、中小企業・個人事業主のHP制作を数多く手がけてきました。今回は「0円制作」の実態を、制作会社の内側から正直にお伝えします。
「0円」には3種類ある――まず整理しよう
「ホームページ制作0円」という言葉は、一見同じように見えて、まったく異なる3つのビジネスモデルを指している。まずここを整理しないと、比較も判断もできない。
①DIY型:自分で作る0円(Wix・STUDIO・Jimdo)
WixやSTUDIO、Jimdoなどのノーコードツールを使って、自分でホームページを制作する方法。制作会社への支払いは発生しないため「制作費0円」は本当だ。ただし、実際に手を動かして作るのは経営者や担当者本人になる。
②分割型:初期費用0円・月額固定の制作会社プラン
制作会社が制作費を無料にする代わりに、月額費用を設定するプラン。「初期費用0円、月額1〜3万円で運用まで対応」というモデルで、実態は制作費を月額の中に含めた分割払いに近い。いわゆるサブスク型ホームページ制作サービスがこれにあたる。
③リース型:5年縛りで実質借金
制作会社が制作したホームページの費用を、リース会社が立て替えて支払い、ユーザーはリース会社に月額を支払い続けるモデル。5年・7年などの長期契約で途中解約不可が基本。「制作費0円」は建前で、リース総額を計算すると相場よりはるかに高額になることが多い。
3種類の比較まとめ
| 種類 | 制作費 | 月額 | 所有権 | 解約リスク |
|---|---|---|---|---|
| ①DIY型 | 0円 | ツール利用料のみ | 自分 | 低い |
| ②分割型 | 0円(月額に含む) | 1〜3万円 | 制作会社 | 中〜高 |
| ③リース型 | 0円(リース払い) | 2〜5万円 | 制作会社 | 非常に高い |
①DIY型(Wix・STUDIO)の実態――「0円」は本当か?
DIY型は制作会社に支払うお金がないという意味では確かに「0円」だ。しかし見落とされがちなコストがある。それは経営者の時間だ。
工事現場に素人が一人残された状態
WixやSTUDIOは直感的に操作できるよう設計されているが、ビジネス用途で使えるクオリティのホームページを作るには、相応の学習と時間が必要だ。デザインの知識、SEO設定、問い合わせフォームの設置、スマートフォン対応の確認――「工事現場に素材だけ用意されて、素人が一人残された」状態に近い。
時間コストと品質の問題
経営者が時間を使ってホームページ制作に取り組んだとして、その時間を本業に使っていたら、いくらの価値を生み出せていただろうか。仮に1時間の価値を5,000円とし、制作に40時間かかれば20万円分のコストが発生している計算になる。「0円」と言いながら、実は高くついている可能性がある。
どんな人に向いているか
DIY型が合うのは、副業・個人の試験的なプロジェクト・コストをとにかく抑えたい個人事業主など、限られた用途だ。集客・問い合わせ獲得を本気で狙う中小企業のメインサイトとしては、品質と機能の面で限界がある。
DIY型を選ぶ前に確認すること
- ホームページ制作・更新に充てられる時間が週に何時間あるか
- SEO設定・アクセス解析を自分で行える知識があるか
- デザインのクオリティが集客に影響しないか
- 将来的に制作会社に移行する場合のデータ移行コストを考慮しているか
②分割型(初期0円・月額制)の長期コスト――5年で何円になるか
分割型は「初期費用ゼロ」という入り口の低さが魅力だ。しかし月額費用が続く限り支払いは続き、5年続ければ相当な金額になる。
月額別・5年間総額シミュレーション
月額費用は制作会社によってさまざまだが、一般的に月1〜3万円のレンジが多い。これを5年(60か月)で計算するとどうなるか。
| 月額 | 1年(12か月) | 3年(36か月) | 5年(60か月) |
|---|---|---|---|
| 1万円 | 12万円 | 36万円 | 60万円 |
| 2万円 | 24万円 | 72万円 | 120万円 |
| 3万円 | 36万円 | 108万円 | 180万円 |
月2万円のプランを5年続けると、総額120万円になる。格安HP制作の相場が30〜80万円程度であることを考えると、長期的には一括制作の方が割安になるケースは少なくない。
「所有権がない」レンタル型という本質
分割型でさらに重要なのが所有権の問題だ。月額を払い続けることでホームページを「使わせてもらっている」という構造のため、解約すれば原則としてサイトは使えなくなる。賃貸住宅と同じで、家賃を払い続ける限り住めるが、退去すれば部屋には入れない。5年間払い続けたとしても、契約終了と同時にサイトは消える。
注意点
分割型では「サイトのデータを渡してもらえない」ケースも多い。解約後に別の会社でサイトを作り直す場合、デザイン・文章・画像などはすべてゼロからの再スタートになる。事前に「解約後のデータ引き渡し」について確認しておくことが不可欠だ。
分割型が向いているケース
初期費用の工面が難しい創業直後の事業者や、WordPressの管理が難しいITが苦手な方には、管理ごとお任せできる分割型が合う選択になることもある。ただし契約期間・総額・解約条件を事前に確認した上で選ぶことが重要だ。
③リース型の実態――「途中解約不可」の本当の怖さ
3種類の中で最もリスクが高いのがリース型だ。「制作費0円」の裏に、実質的な借金契約が隠れている。
5年縛り・途中解約不可=実質借金
リース型の仕組みを整理すると、制作会社がリース会社に制作費を請求し、リース会社がその費用を立て替えて支払う。そしてユーザーはリース会社に月々の支払いをする。つまり、制作費を借金して分割返済しているのと実態は変わらない。5年・7年という長期契約が多く、途中解約は原則不可か、残債一括支払いを求められる。
制作会社が倒産しても支払い義務は残る
リース型の最大の落とし穴がここだ。仮に制作会社が廃業・倒産した場合、ホームページのサポートを受けられなくなる。しかしリース会社への支払い義務は消えない。制作会社との契約とリース会社との契約は別物だからだ。「サービスを受けられないのに支払いだけ続く」という最悪の事態が起きうる。
リース会社と制作会社は別会社という落とし穴
「申し込む」と決めてから初めてリース契約の話が出てくるケースがある。最初の提案では「月々のサーバー代」「月額管理費」という説明しかなく、「リース」という言葉は一切出てこない。しかし契約書を読むと、そこにはリース会社との三者間契約が記載されている。
リース型の見分け方
- 契約書に「リース」「割賦」「分割払い」という言葉が出てくる
- 支払先が制作会社ではなく「○○ファイナンス」「○○リース」などになっている
- 「審査が必要です」と言われる(銀行や信販会社への与信審査)
- 「解約には残債の一括支払いが必要」という条件が入っている
実際に相談を受けた事例――起業系レンタルオフィス経営者Aさんの話
ここで、私が実際に相談を受けた事例をお伝えしたい。この話は、制作費0円の営業が持つ構造的な問題をすべて含んでいる。
「ティザーサイト、制作費0円」という入り口
起業支援のレンタルオフィスを運営するAさんは、すでに自社のホームページを持っていた。そこへHP制作会社から営業の連絡が入った。
「今お持ちのホームページとは別に、ティザーサイトとして新しいサイトを制作します。制作費は一切いただきません。月額はサーバー代だけ、たったの3万円です。起業をお考えの方が多く検索するキーワードで集客でき、ポータルサイトにも掲載されます。今のホームページより問い合わせが増えますよ」
「起業」というキーワードは検索ボリュームが大きく、Aさんのビジネスとの親和性も高い。営業担当者のトークは具体的で、実績数字も交えた説得力ある内容だった。「本当に集客できるかもしれない」とAさんは思い込み、気づいたら「申し込みます」と答えていた。
月3万円が5年で180万円になるカラクリ
申し込みを決めてから、Aさんは改めて条件を整理してみた。10ページ構成、月額3万円、5年契約。
3万円 × 60か月 = 180万円。
「相場から考えてどう考えてもおかしい」とAさんは気づいた。10ページのホームページ制作に180万円は、格安制作の相場と比べてあまりに高い。しかも5年後には手元に何も残らない。ドメインとサーバーは制作会社が管理しており、解約するとドメインを持っていかれるという条件もこの時点で初めて明示された。
申し込んだ後に出てきた「リース契約」という言葉
さらに問題だったのは、「申し込みます」と伝えた後のタイミングだ。そこで初めて「リース契約になります」という言葉が出てきた。制作費をリース会社が立て替え、Aさんはリース会社に月額を支払う契約――つまり分割払いの借金だった。
最初の提案段階では、リースの「リ」の字もなかった。「申し込む」と言った手前、断りにくい状況が作られていた。
カード審査落ちという「幸運な脱出」
Aさんは事業立ち上げ期で借入が多く、リース会社の信用審査に通らなかった。契約は白紙になり、Aさんは後日こう話してくれた。
「審査が落ちて本当に助かりました。もし通っていたら、5年間で180万円、しかも途中解約もできない契約を結んでいたんです。あの営業マンの話術に完全にのせられていました。怖い話ですよね」
この話を聞いて、私は改めて感じた。クライアントのドメイン・SEO資産・メールアドレスを担保に取るようなビジネスモデルは、我々にはできない。ホームページは経営者の資産であるべきで、制作会社が人質として持ち続けるものではないと考えている。
解約するとどうなるか――データ・ドメイン・メールの行方
分割型・リース型のホームページを解約するとき、多くの人が「サイトが消えることが怖い」と言う。しかしサイトが消えること自体は、実はまだいい。本当に怖いのは別のところにある。
サイトが消えることは、実はまだいい
ホームページのデザインや文章が消えても、もう一度作り直せば済む。費用と時間はかかるが、取り返しのつかない問題ではない。問題は「ドメイン」だ。
本当に怖いのはドメインとメールアドレスの喪失
ドメインとはインターネット上の「住所」だ。例えば yamada-office.co.jp のようなURLのことで、これはホームページだけでなく、メールアドレスの基盤にもなっている。制作会社がドメインを管理している場合、解約と同時にドメインを持っていかれる可能性がある。
そうなると何が起きるか。
info@yamada-office.co.jpというメールアドレスが使えなくなる- 名刺・会社案内・過去の営業資料に載っているメールアドレスが無効になる
- 既存顧客からのメールが届かなくなる
- メールアドレス変更の案内を、すべての取引先に送る必要が生じる
SEO順位ごとゼロになる
Googleの検索順位はドメインに紐づいて蓄積される。長年かけて上位表示できていたキーワードも、ドメインを失った瞬間にゼロからやり直しになる。新しいドメインで同じ順位を取り戻すには、数か月から数年かかることもある。
ドメインを失うと起きること
- 会社のメールアドレスが即日使えなくなる
- 名刺に印刷したメール・URLが全部無効になる
- Googleで積み上げてきたSEO評価がゼロにリセットされる
- 既存顧客への連絡変更作業が大量発生する
契約前に確認すべき5つのチェックポイント
「ホームページ制作0円」の提案を受けたとき、契約前に必ず確認すべきポイントがある。営業担当者に直接聞いてもいいし、契約書で確認してもいい。答えが曖昧な場合や、答えを渋る場合は要注意だ。
「ドメインは御社(制作会社)の名義になりますか、それとも私の名義で取得できますか?」と直接聞く。「弊社で管理します」という答えが返ってきた場合、解約時のリスクを必ず確認すること。理想は自分名義で取得・管理できること。ドメインはお名前.comやムームードメインなど、自分でも簡単に取得できる。
「解約した場合、HTMLデータ・画像・テキストを受け取ることはできますか?」と確認する。「データはお渡しできません」という答えは、解約後に別の会社でサイトを作り直す際にゼロスタートになることを意味する。データを引き渡してもらえる場合でも、WordPressのエクスポートデータなのか、静的なHTMLなのかを確認する。
「1年後・2年後に解約したい場合、どのような手続きと費用が発生しますか?」と聞く。「残債の一括支払い」「違約金が発生」という条件がある場合は、長期的な縛りがあることを前提に検討する必要がある。「いつでも解約できます」という言葉だけでなく、解約時の具体的な手順を文書で確認すること。
「支払先は御社(制作会社)に直接支払う形になりますか?」と確認する。「審査があります」「リース会社を通します」という話が出たら、それはリース型であることを示すサインだ。リース型の場合、制作会社が倒産しても支払い義務は消えない点を必ず理解した上で判断すること。
「作成されたホームページの著作権は私側に帰属しますか?」と確認する。著作権が制作会社に帰属したままの場合、デザインや文章を他社でそのまま使用できない可能性がある。契約書の著作権条項を必ず確認すること。
「格安一括制作+低コスト運用」という第3の選択肢
DIY型・分割型・リース型以外に、もう一つの選択肢がある。それが格安一括制作+自分でコスト管理する運用だ。
初期費用を抑えながら所有権を持つ方法
ホームページを一括で制作し、ドメインとサーバーを自分名義で管理する。制作費を一度払えばサイトは自分の資産になり、解約という概念が存在しない。月額の支払いも不要になる。
月額無料格安HP制ゼロランでは、このモデルでホームページ制作を行っている。ドメイン・サーバーはクライアント名義での取得をサポートし、制作物の著作権は原則として依頼者に帰属する。
年間維持費の現実的な試算
一括制作後の年間維持費は以下のような水準が目安になる。月額3万円のサブスク型と比べると、10分の1以下に抑えられる計算だ。
| 費用項目 | 年間目安 | 備考 |
|---|---|---|
| ドメイン更新料 | 1,000〜3,000円 | 自分で管理 |
| サーバー費用 | 6,000〜18,000円 | 共有サーバー |
| SSL証明書 | 0〜3,000円 | Let's Encrypt等で無料化可 |
| WordPressメンテナンス | 0〜24,000円 | 自己管理or保守契約 |
| 合計 | 年間2〜5万円程度 | 月換算1,700〜4,200円 |
月額無料格安HP制ゼロランへのご相談
ホームページ制作のコスト・リスク・選択肢について、無料でご相談を承っています。「今の契約を見直したい」「これから制作を考えている」という段階でもお気軽にどうぞ。お問い合わせはこちら
よくある質問
QWixで作ったサイトを、あとで本格的なWordPressサイトに移行できますか?
技術的には可能ですが、自動的な移行ツールはなく、ほぼゼロからの作り直しになります。デザイン・文章・画像を再現するには制作会社への依頼が必要で、移行コストがかかる点を覚えておいてください。ドメインはWixからでも移管できますが、SSL設定など技術的な作業が伴います。
Q初期0円プランは本当に月額だけ払えばいいですか?追加費用はありませんか?
プランによって異なりますが、ページ追加・デザイン変更・独自ドメイン設定などが別途有料というケースは多いです。「月額に含まれること・含まれないこと」を契約前に一覧で確認することをおすすめします。「何かあるたびに追加費用が発生する」という運用になると、実質的なコストはかなり高くなります。
Qリース契約かどうかは見積書や提案書のどこで判断できますか?
提案・見積りの段階では判断しにくいケースが多いですが、「審査が必要です」「信販会社を通します」「リース会社と三者契約になります」という言葉が出てきたら、リース型のサインです。契約書の支払先名と契約期間・解約条件を必ず確認してください。支払先が制作会社以外(ファイナンス・リース・信販会社)になっていればリース型です。
Q0円制作プランで作ったサイトのSEO効果はどうなりますか?
SEO効果はサイトの構造・コンテンツの質・ドメインの管理状況によって決まるもので、「0円か否か」とは直接関係ありません。ただし、分割型・リース型では制作会社がサイト構造やSEO設定を握っており、自分で改善できる範囲が限られることが多いです。また解約後にドメインを失えば、積み上げてきたSEO評価はゼロになります。
まとめ:「0円」の言葉に隠れているものを見抜く
「ホームページ制作0円」には、DIY型・分割型・リース型という3つのまったく異なるモデルが混在しています。Aさんのような事例は、今この瞬間も日本全国で起きています。以下の3点を頭に入れておくだけで、大きなリスクを避けられます。
- 「0円」は3種類あり、中身はまったく異なる。月額×年数で総額を必ず計算する
- 分割型は長期では一括制作より高くなる。リース型は実質借金で途中解約不可のリスクがある
- 最大のリスクはドメインの喪失。解約後にメールアドレスとSEO資産を同時に失う可能性がある