毎月、制作会社から請求される「保守費用」。金額は1万円だったり、3万円だったり。でも、その中身を正確に説明できる経営者や担当者は、実は多くありません。
「そういうものだと思って払っていた」「制作を頼んだ会社にそのまま任せている」という方がほとんどではないでしょうか。
この記事では、ホームページの維持費用・保守とは何かを、Web制作の現場に10年以上携わってきた筆者が正直に解説します。特に、「ソフトウェア(システム開発)の保守」と「ホームページの保守」の違いを明確にすることで、「本当に必要な費用はどれか」「今の契約が適正かどうか」を判断できるようになっていただくことが目的です。
この記事でわかること
ソフトウェア保守とホームページ保守の本質的な違い/サイトの種類ごとに保守が「必要か不要か」の判断基準/適正な保守費用の目安(HTML・WordPress別)/今払っている保守費用を見直すための5つの質問
筆者は中小企業向けにWebサイト制作・運用サポートを行うコンサルタントです。毎月、費用対効果が見えにくい保守契約の見直し相談を受けており、その経験から率直にお伝えします。
「ホームページの保守」と「ソフトウェアの保守」は別物
多くの中小企業が混同しているのが、この2つの「保守」です。
Web制作会社からホームページを作ってもらうと、ほぼ必ずと言っていいほど「月額の保守・運用費」が提案されます。金額は会社によりさまざまですが、月1万円から5万円程度が多い印象です。
その根拠として制作会社がよく言うのが「システムの維持管理が必要だから」という説明。ただ、これはソフトウェア開発の世界の常識をホームページに持ち込んだ説明であり、必ずしもすべてのホームページに当てはまるわけではありません。
ソフトウェア保守とは何か
まず、ソフトウェア(業務システム)の世界における保守・運用とはどういうものかを整理します。
業務システム、たとえば販売管理システムや在庫管理システムを開発した場合、そのシステムはクラウドサーバー(AWSなど)や専用サーバー、VPSサーバー上で動作しています。これらのサーバーは設定が複雑で、管理に専門知識が必要です。また、PythonやPHPといったプログラム言語のバージョンが変わればコードの修正が必要になり、データベース(MySQL、PostgreSQLなど)も定期的なアップデートや監視が欠かせません。
さらに、専用サーバーは物理的な障害で落ちることがあります。ハードウェア故障、ネットワーク障害、OS不具合など、原因は多岐にわたり、そのたびに技術者が復旧作業を行う必要があります。こうした背景があるため、システム開発の世界では「開発費用の15〜20%程度を年間保守費に充てるのが一般的」とされており、保守・運用費は当然のコストとして認識されています。
ホームページにシステム保守が不要な理由
では、一般的な中小企業のホームページはどうでしょうか。
普通のホームページは、エックスサーバー・ロリポップ・さくらインターネットといったレンタルサーバーで運用されています。レンタルサーバーはサーバーの管理・監視・障害対応のすべてをサービス会社が行います。仮にサーバーが落ちたとしても、復旧対応はサービス会社の責任範囲であり、利用者は何もしなくてよいのです。
また、静的なHTML+CSSで作られたシンプルなホームページであれば、プログラムを動かす仕組み自体がありません。HTMLファイルとCSSファイルをサーバーに置いているだけなので、「プログラムのバージョンアップ」という概念そのものが存在しません。
| 比較項目 | ソフトウェア(業務システム) | 一般的なホームページ(HTML) |
|---|---|---|
| サーバー種類 | 専用サーバー・クラウドサーバー | レンタルサーバー |
| 障害対応 | 技術者が自社で対応 | サービス会社が対応 |
| プログラム更新 | Python・PHPコードの修正必要 | 不要(HTMLは静的) |
| DB管理 | MySQL等の監視・チューニング必要 | 不要(DBなし) |
| 保守の必要性 | 高い(必須) | 低い(ほぼ不要) |
ポイント
レンタルサーバーで動くシンプルなHTMLサイトは、ソフトウェア開発と同じ「保守の概念」は適用されません。制作会社の「保守が必要」という説明は、サイトの種類によっては当てはまらないケースがあります。
体験談:「そういうものだと思っていた」という相談
以前、地方で工務店を経営するAさんから、こんな相談を受けました。
5年前に地元のWeb制作会社にホームページを作ってもらって、そのままずっと月3万円の保守費を払っています。でも、ホームページの内容は変わっていないし、何をやってもらっているのかよくわかっていません。これって普通のことですよね?
Aさんのホームページを確認したところ、HTML+CSSで作られたシンプルな会社紹介サイトでした。ページ数は10ページ程度、フォームもなく、WordPressも使っていません。サーバーはさくらインターネットのレンタルサーバーを利用。ドメインも別途自社契約でした。
制作会社に保守の内容を問い合わせてもらったところ、返ってきた回答は「月1回のサーバー確認と、コンテンツ更新が必要な場合の対応」でした。実際には5年間でコンテンツの変更依頼は一度もなく、サーバー確認の記録もありませんでした。
つまり、実態としては5年間・180万円を払って何も行われていなかったことになります。Aさんは「制作してもらった会社だから信頼していた」と言っていましたが、「保守費用とは何か」を確認しないまま契約を続けていたことが問題でした。
この事例は極端なケースではありません。同様の相談は年に何件も受けており、中小企業が「そういうものだと思っていた」という認識のまま、不透明な保守費用を払い続けているのが現状です。
この事例から学ぶこと
保守費用は「制作会社が提案するから必要」ではなく、「何をするかが明確であるから払う」ものです。契約前・契約更新時には必ず内容を書面で確認することが重要です。
ホームページの種類別・保守の必要性を整理する
ホームページの維持費用・保守の必要性は、サイトの種類によって大きく異なります。一律に「必要」または「不要」と判断するのではなく、自社のサイトがどのタイプに該当するかを把握することが重要です。
静的HTML+CSSのシンプルなサイト
会社概要・サービス紹介・採用情報など、情報を静的に掲載しているだけのHTMLサイトです。WordPressやPHPを使わず、HTMLとCSSのファイルをレンタルサーバーにアップロードして運用しています。
このタイプのサイトに必要な維持費用は、サーバー代・ドメイン代のみです。レンタルサーバーであれば月500円〜1,500円程度、ドメインは年間1,000〜3,000円程度が一般的な費用感です。バックアップについても、エックスサーバーなどは自動バックアップが標準搭載されており、月500円程度のオプションを追加すれば十分なケースがほとんどです。
HTMLサイトに毎月数万円の保守費用が発生する合理的な理由は通常ありません。もし支払っているなら、その内容を必ず確認してください。
WordPressで作ったサイト
WordPressはCMS(コンテンツ管理システム)であり、PHPというプログラム言語とMySQLというデータベースで動作しています。このため、静的HTMLサイトとは異なり、定期的なメンテナンスが必要です。
WordPressの保守が必要な主な理由は、セキュリティの脆弱性対策です。WordPressはシェアが非常に高いCMSであるため、攻撃ターゲットにされやすく、古いバージョンを放置すると不正アクセス・改ざん・マルウェア感染のリスクが高まります。WordPressコア・テーマ・プラグインの定期的な更新、PHPとデータベースのバージョン管理、定期バックアップは最低限実施すべき作業です。
適切な保守作業を外注するなら月5,000〜15,000円が目安です。この範囲を大きく超える場合は、コンテンツ更新作業や追加開発が含まれているか確認が必要です。
ECサイト・会員管理など複雑なシステム連携サイト
ECサイトや予約システム、会員管理機能を持つサイトは、ソフトウェア開発に近い性質を持ちます。決済情報や個人情報を扱うため高度なセキュリティ対策が必要であり、システムの安定稼働を保つためのサーバー監視や障害対応体制も求められます。このタイプは保守費が高くなることに一定の合理性があります。
WordPressサイト:保守が必要な理由
- PHPのバージョン管理が必要
- セキュリティ脆弱性への対応
- プラグインの互換性確認
- データベースの更新・最適化
- 定期バックアップの確認
HTMLサイト:保守がほぼ不要な理由
- プログラムを動かす仕組みがない
- レンタルサーバーの管理はサービス会社
- バックアップはサーバーオプションで対応可
- セキュリティリスクが低い
- サーバー障害の復旧は業者対応
注意点
「WordPressを使っているから保守費が必要」という考えは正しいですが、「何となく毎月払い続けている」のは問題です。具体的に何の作業をしてもらっているかを把握し、費用と作業内容が釣り合っているかを定期的に確認することが大切です。
正直に言う「適正な保守費用」の目安
Web制作業界では、保守費用の「相場」が曖昧なまま語られることが多いです。ここでは、実務経験をもとに率直な目安をお伝えします。
静的HTMLサイトの適正費用
静的HTMLのみで構成されたサイトの維持費用は、以下が適正です。
| 費用項目 | 月額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| レンタルサーバー | 500〜1,500円 | エックスサーバー・ロリポップ等 |
| ドメイン | 100〜300円 | 年間1,200〜3,600円の月割り |
| SSL証明書 | 0〜300円 | 無料SSL(Let's Encrypt)で十分なケースが多い |
| バックアップ | 0〜500円 | サーバーオプション利用 |
| 保守作業費 | 0円 | 通常の管理作業は発生しない |
| 合計 | 600〜2,600円程度 | これが適正なコスト |
HTMLサイトに月1万円以上の保守費が発生しているなら、その内訳を制作会社に書面で確認することをお勧めします。
WordPressサイトの適正費用
WordPressで構築したサイトの保守費用の適正範囲は以下の通りです。
| 費用項目 | 月額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| レンタルサーバー | 1,000〜3,000円 | WP対応プランは若干高め |
| ドメイン | 100〜300円 | 年間費用の月割り |
| WordPress・プラグイン更新確認 | 2,000〜5,000円 | 月1回の作業費 |
| PHPバージョン管理 | 0〜3,000円 | 必要時のみ(年1〜2回程度) |
| バックアップ確認 | 0〜1,000円 | 自動バックアップの確認作業 |
| 合計 | 5,000〜15,000円程度 | これが目安の適正範囲 |
高すぎる場合に確認すべきポイント
月3万円以上の保守費用を払っている場合、以下のいずれかが含まれていれば相応の費用と言えます。しかし含まれていない場合は見直しが必要です。
- 月に一定量のコンテンツ更新・ページ追加作業が含まれている
- SEO分析レポートの作成・改善提案が含まれている
- 24時間365日の緊急障害対応が保証されている
- 広告運用(Google広告・SNS広告)の管理が含まれている
- セキュリティ診断・脆弱性スキャンが定期実施されている
ポイント
「保守費=作業費」です。月額の保守費用が高い場合は、毎月具体的にどんな作業をしてもらっているかを作業報告書などで確認してください。報告が一切ない場合は改善を求めるか、契約を見直すタイミングです。
WordPress保守が必要な技術的な理由
「WordPressは保守が必要」とよく言われますが、その理由を正確に理解している人は少ないです。技術的な背景を平易に解説します。
PHPのバージョンサポート終了とは
WordPressはPHPというプログラム言語で動作しています。PHPにはバージョンがあり、各バージョンには「セキュリティサポート期限」が設けられています。期限が切れたバージョンはセキュリティ上の問題が発見されても修正パッチが提供されなくなるため、そのまま使い続けることは重大なリスクです。
PHPのバージョン別サポート状況(2026年5月時点):PHP 8.1は2025年12月にセキュリティサポート終了。PHP 8.2は2026年12月まで、PHP 8.3は2027年12月まで対応。現時点ではPHP 8.3以上の利用が推奨されています。(出典:PHP公式サイト・セキュリティ専門各社の資料)
レンタルサーバーはPHPのバージョン切り替えをコントロールパネルから行えるため、バージョンアップ自体の作業は難しくありません。ただし、バージョンを上げることで古いプラグインやテーマが動作しなくなる場合があり、事前の確認作業が必要です。これがWordPress保守の主要な作業のひとつです。
WordPressコアとプラグインのセキュリティリスク
WordPressはインターネット上のサイトの40%以上で使われているCMSです(W3Techs調べ)。利用者が多いということは、それだけ攻撃者に狙われやすいということでもあります。
古いバージョンのWordPressや放置されたプラグインには既知の脆弱性が残ったままになります。これを悪用されると、サイトが海外のスパムサイトにリダイレクトされたり、管理者権限を乗っ取られてサイトを丸ごと削除されたり、訪問者のデバイスにマルウェアが仕込まれたりといった被害が発生します。
放置のリスク
WordPressを2〜3年更新せずに放置しているサイトは、攻撃者にとって格好の標的です。「うちは中小企業だから狙われない」という考えは危険で、むしろ規模が小さく管理が行き届いていないサイトほど自動攻撃ツールにスキャンされやすいのが実態です。乗っ取られた後の復旧費用は、数年分の保守費用を上回るケースもあります。
WordPressサイトを自分で管理する場合も、最低限「WordPress本体・プラグインを常に最新版に保つ」「定期的にバックアップを取る」「PHPバージョンを定期的に確認する」の3点は実施してください。これらはレンタルサーバーのコントロールパネルとWordPressの管理画面から、専門知識がなくても対応できます。
今払っている保守費用を見直す5つの質問
現在、保守費用を支払っている方は、以下の5つの質問を制作会社または担当者に確認してみてください。回答が得られない・曖昧な場合は、費用の見直しを検討するサインです。
「サーバー管理」「セキュリティ対応」という曖昧な回答ではなく、「WordPressの更新確認(月1回)」「バックアップの取得・確認(月1回)」「表示速度チェック(月1回)」など、具体的な作業内容を確認します。口頭でなく書面(作業報告書)での回答を求めましょう。
WordPressを使っているサイトは保守が必要です。一方、HTMLのみのサイトであれば通常の保守作業はほぼ発生しません。自社サイトがどちらで作られているかを確認し、費用の妥当性を判断する基準にします。サイトのURLの末尾が「.html」であったり、管理画面(ダッシュボード)がない場合はWordPressでない可能性が高いです。
バックアップの有無・頻度・保管場所を確認します。「サーバーに自動バックアップがあります」という回答であれば、それがサーバーのオプション機能であるか・保守費に含まれる作業なのかを区別してください。エックスサーバーなどは標準でバックアップが付属しているため、保守費の名目で別途請求する合理性がない場合があります。
WordPressを使っている場合、現在動作しているPHPのバージョンを確認します。レンタルサーバーのコントロールパネルから確認できます。PHP 8.0以前のバージョンはセキュリティサポートが終了しており、早急なアップデートが必要です。これを確認・対応してもらえているかが、保守作業の核心部分です。
保守費用が何の費用の合算なのかを書面で確認します。「サーバー代」「ドメイン代」「作業費」がそれぞれいくらかを明確にしてもらいましょう。自社でサーバー・ドメインを契約すれば節約できる部分があります。また、作業費の部分が実態に見合っているかを評価します。
- 毎月の作業内容を書面で確認している
- 自社サイトがWordPressかHTMLかを把握している
- 定期バックアップの仕組みを確認している
- PHPのバージョンが最新に近いことを確認している
- 保守費用の内訳(サーバー代・作業費)を書面で把握している
よくある質問(FAQ)
Q自分でWordPressを管理することはできますか?
できます。WordPressのダッシュボードから「更新」メニューを開き、WordPress本体・テーマ・プラグインを最新版に保つことは、専門知識がなくても可能です。PHPバージョンの確認・変更はレンタルサーバーのコントロールパネルから行えます。バックアップもプラグイン(UpdraftPlusなど)や、サーバーの自動バックアップ機能を活用すれば、ほぼ費用ゼロで対応できます。ただし、アップデートによってサイトの表示に問題が生じる場合もあるため、作業前のバックアップ取得は必須です。
Q保守契約を途中で解約することはできますか?
契約内容によりますが、多くの場合は解約可能です。ただし、サーバーやドメインの管理を制作会社に任せている場合は、解約前に「サーバーアカウントの移管」「ドメインの移管」を行う必要があります。これを怠ると、解約後にサイトが消えるリスクがあります。解約前に「サーバーのログイン情報」「ドメイン管理者情報(AuthCodeなど)」を自社で把握・取得しておくことが重要です。
Qレンタルサーバーのバックアップで十分ではないですか?
多くの場合、十分です。エックスサーバーは自動バックアップが標準搭載されており、過去14日分のバックアップから復元できます。ロリポップやさくらインターネットも有料オプションでバックアップが取得できます。WordPressのバックアップとして「外部ストレージ(Googleドライブ等)への自動送信」を組み合わせれば、さらに堅牢になります。保守費の名目でバックアップ費用を請求されている場合は、サーバーの機能で代替できないか確認してみてください。
Q保守費用の相場は月いくら程度ですか?
サイトの種類によって異なります。静的HTMLのみのサイトはサーバー・ドメイン代のみで月600〜2,500円程度が適正です。WordPressサイトは月5,000〜15,000円程度が目安です。コンテンツ更新や月次レポート作成を含む場合は月2〜3万円程度になることもあります。月3万円を超える場合は、含まれる作業内容を必ず確認してください。
まとめ:種類で判断する、保守費用の考え方
ホームページの維持費用・保守とは何かを整理すると、「ソフトウェア保守とは別物であり、サイトの種類によって必要性がまったく異なる」というのが結論です。
- 静的HTMLのサイトはレンタルサーバーで動かしていれば保守費はほぼ不要。月数万円払っているなら内訳を必ず確認すべき
- WordPressは脆弱性対策のためPHP・プラグイン・コアの定期更新が必要。月5,000〜15,000円が適正な外注費の目安
- 今払っている保守費用の内訳を書面で確認し、作業実態が伴っているかを5つの質問でチェックすること
「保守費用を見直したい」「自社サイトの状態が心配」という方は、月額無料格安HP制ゼロランへお気軽にご相談ください。現在の保守契約の内容確認や、適正費用へのプラン見直しを含め、ご状況に応じたアドバイスをご提供しています。