「ホームページを一生懸命作ったのに、なぜか問い合わせにつながらない」。そんな相談を、私はこれまで数えきれないほど受けてきました。デザインも整っている。文章もちゃんと書いてある。それなのに、なぜか成果に結びつかない。
実はこの問題、突き詰めると理由はたった一つに集約されることが多いんです。マーケティングの根っこにある、ある一つの原則が反映されていないから。
この記事では、ダイレクトマーケティングの世界で語り継がれる、たった一つの普遍的な原則についてお話しします。業種が変わっても、時代が変わっても、決して色あせないこの原則を知っておくだけで、あなたのホームページの見え方はガラッと変わるはずです。
この記事でわかること
- マーケティングの原則を「たった一つ」だけ挙げるなら何か
- なぜこの原則は業種・時代を問わず通用するのか
- 求人広告のトップ営業マンが実際に使っていた「痛みのクロージングトーク」
- あからさまに煽らず、自然に「痛み」を意識させる伝え方のコツ
- この原則をホームページ集客にどう反映させるか
私はホームページ制作・集客支援の仕事に10年以上携わっていますが、その前は求人広告代理店で営業をしていました。今回お話しする原則は、実はその営業時代に、ある伝説的な同僚から学んだものなんです。
マーケティングにたった一つだけ原則を挙げるなら「苦痛回避」
人は快楽を得るよりも、苦痛を避けるほうを強く求めます。
ダイレクトマーケティングの世界的な第一人者、神田昌典さんの言葉をお借りすると、こう表現されています。
「人が快楽を求め、苦痛を避ける。そして、快楽を求めるより苦痛を避ける方が、より強く働く」——神田昌典
私がマーケティングの原則をたった一つだけ挙げろと言われたら、迷わずこれを選びます。理由はシンプルで、人間であり続ける限り、この心理は絶対に変わらないからです。
チラシでも、看板でも、ネット広告でも、張り紙でも、対面の接客でも——業種や手法がどれだけ変わっても、この原則だけは共通して機能します。時代がどれだけ移り変わっても、原則そのものは変わりません。もちろんWeb集客も例外ではなく、この原則はまさに基本中の基本なんです。
自分に問いかけてみてほしいこと
もしあなたのホームページが「売上につながる集客」を目的にしているなら、一度自分に聞いてみてください。
- ホームページの中に、この「苦痛回避」の原則を反映した箇所はあるか
- あったとしても、それは本当に効果的に力を発揮しているか
実際、問い合わせや売上につながっているホームページやLPには、例外なくこの原則が応用されています。ただ、会社ごとに個性があって、伝え方が違うだけなんです。そして、本当に重要なのはその「伝え方」。あからさまに煽るのではなく、気づかれないように、忍ばせるように使わないといけません。
体験談|求人広告のトップ営業マンが使っていた「痛みのクロージング」
この「気づかれないように忍ばせる」技術を、私は営業の現場で目の当たりにしました。
今から30年ほど前、私は求人広告代理店で、求人雑誌の営業をしていました。当時の職場に、普通の営業の3倍を売る人がいたんです。成績はいつもトップ。周りが月20万円を売るところを、その人は60万円を売っていました。
その営業マンのクロージングトークは、実はいつも同じ、ワンパターンでした。こんな感じです。
「この求人誌のこの枠だと、1週間の掲載料金は20万円です。1回の掲載でも、応募が集まって採用できるかもしれません。ですが私は、3週間連続の掲載をおすすめしています。なぜなら、1週間だけだと応募の母数がどうしても限られてしまい、本当に欲しい優秀な人材に出会えない可能性があるからです。天候が悪ければ応募が減ることもありますし、たまたま同じ週に条件の良い競合他社が掲載していれば、優秀な人材はそちらに流れてしまうかもしれません。でも3週間続ければ、そうした偶然に左右されず応募が3倍集まります。多くの応募の中から選べれば、それだけ良い人材に出会えて、御社の売上にもつながります。逆に母数が少なく選択肢が狭いままだと、期待した成果を出せない人を採用してしまうリスクもあります。社長は、1週間と3週間、どちらを選ばれますか?」
そして社長は、いつもこう答えるんです。「そうだな、優秀な営業がほしいから3週間にしよう」と。
この体験から得た教訓
- 「採用できるかも」という快楽ではなく、「悪い人材を採用してしまうかもしれない」という苦痛を先に意識させている
- あからさまに煽らず、事実の説明として自然に「痛み」を描写している
- 最後は必ず「選択」を相手に委ねている。押しつけない
正直に言うと、このトークには、いやらしさをまったく感じませんでした。すべて「事実の説明」として語られていて、それでいて自然と痛みを意識させられる。今振り返ると、これはまさに神田さんの言う「苦痛回避」の原則そのものを、完璧に体現したクロージングだったんです。
ホームページ集客に「苦痛回避」の原則を応用する方法
このクロージングトークの構造は、そのままWebマーケティングに応用できます。
ポイントは3つあります。
1. 「得られるもの」より先に「失うかもしれないもの」を描く
多くのホームページは、「こんなに良いことがあります」という快楽訴求から入りがちです。でも、さきほどの営業マンのトークを思い出してください。彼は「採用できるメリット」より先に、「悪い人材を採用してしまうリスク」を丁寧に描写していました。同じ順番を、ホームページの文章にも使えます。
| 業種 | 快楽訴求(Before) | 苦痛回避訴求(After) |
|---|---|---|
| 士業・コンサル | 専門家がしっかりサポートします | 自己流の申請で不備が出ると、受理まで数か月遅れることがあります |
| リフォーム・工務店 | 快適な住まいを実現します | 施工不良は数年後の雨漏り・修繕費増加につながることがあります |
| 整体・エステ | 癒やしのひとときをどうぞ | 放置した歪みは、半年後に慢性的な不調として現れることがあります |
| ホームページ制作 | おしゃれなサイトを作ります | 更新できないサイトは、半年で検索順位が落ち始めることがあります |
2. 「偶然」や「機会損失」を具体的なシナリオで描く
「天候が悪いと応募が減る」「競合が同じ週に掲載していたら人材を取られる」——これは架空の話ではなく、実際に起こりうる具体的なシナリオです。抽象的に「損しますよ」と言うのではなく、「こういう場合に、こう損をする可能性がある」と具体的に描写すると、読み手はリアルに想像して、痛みを感じやすくなります。
3. 最後は「あなたが決めてください」と選択を委ねる
この営業マンは、最後に必ず「社長はどちらを選ばれますか?」と聞いていました。押しつけるのではなく、判断材料を提示したうえで相手に選んでもらう。ホームページでも、「今すぐ申し込め」ではなく、選択肢を提示して読み手に決めてもらう形にすると、押しつけがましさが消えて、自然に行動につながります。
やりすぎ注意|苦痛回避のよくある失敗パターンと回避策
ここは、正直にお伝えしておきたい注意点です。
ありがちな失敗
事実に基づかない不安を煽ったり、「今すぐ買わないと大損します」のような直接的な煽り文句を使うと、読み手は「売り込まれている」と感じて離脱してしまいます。あの求人広告の営業マンのトークが効いたのは、すべて事実に基づいた説明だったからです。誇張やウソの苦痛は、一瞬効いても長期的には信頼を失います。
苦痛回避の原則は強力なぶん、使い方を間違えると逆効果になります。ホームページに反映するときは、次の3点を意識してください。
- 苦痛は「事実」に基づいて描写する。誇張・でっち上げはNG
- 最後は必ず「選択は相手に委ねる」形にする。押しつけない
- 苦痛だけで終わらせず、それを避ける具体的な方法(=あなたのサービス)を示す
よくある質問(FAQ)
苦痛回避の原則について、経営者の方からよくいただく質問をまとめてみました。
Q苦痛を煽るようで抵抗があります。実践しても大丈夫ですか?
事実に基づいた情報を、誠実に伝える分には問題ありません。むしろ、伝えないほうが不親切な場合もあります。ポイントは「誇張しない」「選択を相手に委ねる」ことです。
QBtoBの商材でも使えますか?
使えます。今回紹介した事例も、求人広告というBtoBの営業トークです。業種を問わず機能するのが、この原則の最大の強みです。
Q「緊急性・時間限定」のトリガーとの違いは何ですか?
緊急性・時間限定は、苦痛回避を「時間の区切り」で表現した応用形の一つです。詳しくは連載②の緊急性・時間限定トリガーの記事で解説しています。今回の苦痛回避は、そのさらに根本にある原則だと考えるとわかりやすいです。
Qどのくらいの文章量でこの原則を入れればいいですか?
長々と書く必要はありません。1〜2文でも十分効果があります。大事なのは「量」より「順番」と「具体性」です。
まとめ|「苦痛回避」はマーケティングの土台になる唯一の原則
マーケティングの理論やテクニックはたくさんありますが、そのほとんどは、この「苦痛回避」という一つの原則の応用形にすぎません。30年前に見たあの営業マンのトークは、今でも私の中でマーケティングの原点になっています。
この記事の要点を、最後に3つに絞ってお伝えします。
- 人は快楽を求めるより、苦痛を避けるほうを強く求める。これは業種・時代を問わない唯一無二の原則
- 効くのは「事実に基づいた具体的な描写」と「選択を相手に委ねる」誠実な伝え方だけ。煽りすぎは逆効果
- 「得るもの」より先に「失うかもしれないもの」を描くだけで、同じ内容でも伝わり方は大きく変わる
次回の連載②では、この苦痛回避を「時間」で表現する具体的な手法として、緊急性・時間限定トリガーを取り上げます。まずは今回の「苦痛回避」を、あなたのホームページの一文に反映するところから始めてみてください。
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